昨夜からきんかん坊主の所に押しかけ、めでたいめでたいと酒を飲んだ。
いつの間にか眠りこけ、気がついたら新年である。
年齢を重ねるとまた年をとることが恨めしいものであり、
あまりめでたくもない。
本来一本道で一方通行であるはずの時間軸を
365日でまた1から始める暦を考えついた先人は
卓越した頭脳の持ち主であったのかもしれない。
いやいや、考えついたのではなく太陽をぐるぐる回る地球の天然自然の法則に従っただけであり、天然自然の法則が卓越しているのである。
今日は正月だから朝から皆で酒を飲むことにした。
まあ、理由をつけては酒を飲む飲兵衛の集まりだから仕方あるまい。
相変わらず猫は酒の席に寄りつかない。
サラリーマン時代は良かったと言うエイのヒレ君にキンカン坊主は言った。
「君はそうやってサラリーマン時代を懐かしむが、本当に当時は幸せだったのかね。
年中休む間もなく働き、やりたいこともできずに苦痛だったのではないのかね。そもそも仕事自体本当に君がやりたかった事だったのかね。それに確かに安定した収入だったかもしれないけれども実際に裕福だったのかね」
そう言われるてみるとエイのヒレ君も困ってしまった。
「確かにそうですね。決して幸せなんかぢゃなかった。毎日毎日が組織に縛られ、つまらない時間を過ごしたのかもしれません。けれども明日どうなるか分からないという恐怖はなかった。今は苦しいけれどもきっと将来は良いことがあると何となく思ってました。それに組織の中にいると何となく気が楽だった」
「解き放された自由だからこそ明日が怖い。自由を得るのは本当に強い人だけなのかもしれませんね」
キュウリ魚君はそう言う。
「人間なんて弱いものだよ。それでいいんだ。だから宗教がある。だから詩があるし、音楽もある。だから酒があるのだよ」
キンカン坊主はそう言ってグビッと酒を飲む。
「時代の流れに翻弄され、自然の驚異に怯える。それが人間さ。将来の自分と契約してどうする。今日この日こそ美しくなければならない。もっと今日に勇気を持たねばなりませんぜ」
名月君はそう言って威張っている。
正月の日差しが損にも得にもならない我々をいつになく暖かく包み込んでいた。