2010年8月アーカイブ

僕はですね。日本といえば世界でも立派な文明国家だと信じていたんです。
海の藻屑君が悲しい顔をして言った。

ところがですね。
日本を代表する大新聞にこんな見出しが躍るとは正に狐に摘まれたようです。

「大阪市の最高齢152歳 戸籍上120歳以上5125人」
「今度は文久元年生まれ149歳・・・」

江戸時代生まれの人がまだ生きているというのでしょうか。
しかも120歳以上がなんと五千人も大阪市に住んでいるなんて。

そんなふざけた内容が記事になるなんてもう信じられないです。

「日本ってこんなにふざけた国だったのでしょうか。
なんだかむなしくなってしまいます」

海の藻屑君の言葉に名月君が言った。
「世直しが必要だね。駄目だ駄目だ。どうしてこんな世の中になってしまったのであろうか」
そう言いながら猫に氷をひとつ与えると、
猫がニャーと鳴いて氷にじゃれつき始めた。


かき氷

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キンカン坊主のアパートは猛烈に暑い。
エアコンはほとんど壊れているから役にたたないのである。
埃だらけの扇風機をフル回転させながら暑い、暑いと言う。
そんな風だから夏場はあまり行きたくない所なのである。

ところが突然のシロン君の他界の事もあり皆で集まった次第である。
名月君は暑いと言って腹を立てて、猫に八つ当たりする。
キュウリ魚君が制止するが、名月君はやっぱり腹を立てて猫にあたる。

流石にこれでは身が持たないとキンカン坊主がかき氷をごちそうすることになった。
昔どこの家庭にもあったいい加減な手動のかき氷機でかき氷を作るものだから、
すぐに溶け出してべちゃべちゃのかき氷である。
それでもこの暑さの中では有り難い。
いかにも人工的な赤い蜜の味に満面の笑みを浮かべながら喰う。

炎天下の冷房のきかない部屋で、人様の役にはたってないに違いない男達が集まり故人を偲んでいる。
暑い、暑いと言いながらも、何の徳にもならない事を話ながらもやっぱり集まる。
常日頃は全く持って薄情な連中ではあるがやっぱりシロン君を偲ばずにはおれなかったのである。


シロン君とこうして紅茶を飲んだのは随分久しぶりだった。
寒い頃、癌だと聞かされてそれ以来見舞いにも行かないままシロン君は元気になったと言って退院してきた。

それでもゆっくり再会したのはこの時なのだから、小生は友人としても随分薄情な人間に成り下がったものである。

病院での退屈な時間を暫く話した後シロン君は空を見ながらこんな話を始めた。

「実は入院中に素敵な女性と出会ってね」

シロン君といえば美人の奥方が居る。正式に結婚はしていないものの誰もが羨む仲なのである。そんなシロン君が他の女性に心変わりするとはにわかには信じがたいことである。

「僕はね。そんなに長くは生きていられないと思うのです。そして知り合った女性も実は長くはないという。神はなんて愚かなお遊びをするのだろうか。先の長くない二人に恋愛をさせていったいどういうつもりなのか。そんな風に僕の理性は言うのです。けれども僕の感情は、どうしても抑えられないのです」

そんな風に言うとシロン君は照れくさそうに笑ってみせる。
いつまでも子どものような表情を残した男である。

「君は詩を書かないからわからないかもしれないが、恋愛する心がなくなったら芸術家はもう駄目なのです。僕なんぞはもう死にかけているのにやっぱり恋愛して詩を残そうとしている。まったくもって困ったものです」

困るのは奥方の方であろうと美人の奥方を気遣うとシロン君も困惑して言った。

「確かにそうなのです。彼女は僕にとって欠かせない女性だ。僕も彼女を最後まで大事にするつもりでいた。でもね、病院で知り合った女も僕には欠かせない女性なんです」

それは男のエゴで女性には通用しないのだからいい加減に頭を冷やすに限ると、せめても友人としての忠告をした。

シロン君はありがとうと言ってそのまま帰って行った。

それから数日後のことである。
シロン君の奥方から知らせがあった。

それは、シロン君が或る女性と自殺したという内容であった。


毎日ぼんやりとして鼻くそばかりほじくっていると、今日は一体何時なのか判らなくなるものである。

蝉の声を聴き、暑いと腹を立てながら蝉に石を投げつけるとおよそ1メートル程はずれた所に中る。それでも蝉は驚いて飛び出す。慌てて飛び出すと烏の餌食になる。
どうやら烏どもは蝉に味を占めたようである。蝉を追いかけては喰っているのである。
生きるのは退屈であるが大変なものである。
そんな風に損にも得にもならない生き方をしていると今日が何時なのか判らなくなるのである。暑いから季節は夏であろう位のものなのである。

それでも、周りがあまりに静かである。一体どうしたのかと家内に聞くと盆だと言う。そうしてようやく盆であることに気付く始末である。寺を持たない糞坊主であるキンカン坊主も流石に忙しいらしい。名月君も音沙汰がない。あれで結構忙しい身のようである。キューウリ魚君は夏休みをとって故郷に帰っている。退屈な時の遊び友達もこの時ばかりは縁がない。

家内に急かされて仏壇に線香をあげる。
適当な念仏をぶつぶつ唱えて、これで我が家の盆は終わりである。
いい歳をしてみてもさらさら校歌を覚える気のない小学生のようなもので
口をぱくぱくするばかりで何の意味もない。
これでは先祖も気が休まらないことであろう。

そんな風に思うのも束の間で、
暑いからとアイスキャンディーを頬張っている次第である。