世間では年末だの正月だのといっては慌ただしい。
すっかり冷たくなった風が北側の窓をトントンと鳴らす。
あまり馴染みに成りたくはない客が押し掛けて来たかのようである。
アラジンのストーブを着けてみてもやっぱり寒い。
寒いから酒でも飲もうかと思うが熱燗にするような酒も無い。
隣から赤子の鳴き声が響いてくる。きっと若夫婦が孫を連れて来ているのであろう。
年末ともなれば年寄りにとっては有り難い楽しみに違いない。
我が家にはそんな声などあるはずもない。
いつもと変わらない時間だけが刻々と刻まれていく。
日が暮れるのは早いからまだ昼下がりの時刻にも関わらず薄暗くなってきた。
ストーブの灯りに手のひらを開いてぼんやりと見つめていると溜め息が出て来た。
幼い頃に砂山を作るのに夢中に成った事があった。
そして、冷たい風に気付いた時にはすでに日が落ちた後であった。
正気になって周りを見回すと誰も居ない。
恐ろしい程の孤独に大泣きをしてしまったものである。
あの時の恐ろしい孤独感が蘇ってきた。
おそらくあの北風の責任に違いない。
熱い茶を湯のみに入れて、松露を口に放り込み茶を飲む。
そして、これでいいと思う事にした。
